杉
「杉」と言われても、「一体どんな木?」と思う人が大半だと思います。では実際にどんな木なのか、簡単に解説したいと思います。
まず、「杉」という名前の由来ですが、これは成長が早く、まっすぐに育つ木という意味で、「直ぐ木(すぐき)」からきたと言われています。樹形は、イラストのように頭のとがったスラッとしたスタイルで、頭のトンガリは、成長の良い若い木特有。高齢の木になると頭がだんだん丸みを帯びてきます。つまり、頭のトンガリは「若い木」の証、盛んに成長しているという証拠です。
葉の先はイラストように針状にとがり、これらのとがった葉が上向きにたくさんついているのが特徴。桧よりも湿潤地を好み、水分が多く、水はけのよい土地で良く育ちます。
杉は日本固有の木で、北は函館から南は屋久島まで幅広く分布し、成長が早いということで、戦後最もたくさん植林された木です。数字でみると、何と日本面積の12%に杉が植わっていることになります。
古くから杉は、私たち日本人の生活に欠かせない身近な木として重宝されてきました。特に建築用材としては貴重で、例えば樹皮は屋根に、材は柱や板に、そして葉っぱは線香にと、あらゆる所に無駄なく活用されてきたのです。さらに、中心部に近い、赤く色づいた心材部分は、腐れやシロアリ、水に対してとても強く、建物の土台としても広く使われてきました。
けれど、杉を建築用材として使うには、伐採後、製材してからきちんと乾燥させる必要がありますが、水分を多く含む杉の乾燥は非常に難しく、杉の利用上の課題の一つになっています。
性質としては、細胞の空隙が比較的多いため、比重が小さく、それゆえに軽く、柔らかで、加工しやすいのが特徴。また伐採直後は心材部分(赤色)と辺材部分(白色)の色の違いがはっきりしていますが、時間の経過と共に両者とも艶のある茶褐色へと落ち着き、その差は分からなくなります。時間が経つにつれ、質感が良くなるのも杉の特徴といえます。熱伝導率が低く断熱性に優れているので、最近では裸足で歩けるフローリング材として、床材への活用も増加しています。さらに、粘りがあって強く、身近に豊富にある材料なので、梁や桁にも活用されつつあります。
また、杉には多くの地域品種があり、天竜杉、屋久杉、吉野杉、北山杉、秋田杉・・・など、くつかの名前は聞かれたことがあるかと思いますが、それぞれの品種によって性質は少しずつ異なり、用途も違ってきます。
今、最も利用しなければいけないのは、何といってもこの杉の木です。毎年春になると、杉を植え過ぎたことが花粉症の原因として話題になりますが、「植え過ぎた」のが花粉症の原因なのではなく、十分に育った杉を「使わないこと」が原因であることを、もっともっと知ってもらう必要があると思います。山の人の期待を一身に背負って、せっかスクスクと育ったのに、今になって非難されるなんて、あまりに可愛そうです。植えてくれた先人たちにも失礼です。
※なお、海外のCedar(シダー)類を杉と訳すことが多くなっています(例えばレバノンスギ、レッドシダー=俗に言うベイスギ、ヒマラヤスギなど)が、あくまで通訳上のことであって、実はこれらは杉には縁の遠い樹種です。そもそも、ヨーロッパや中央アジア、西アジアにはスギは分布していません。
桧
まず、「桧」という名の由来ですが、細かくチップ状にして乾燥させた桧は燃えやすく、昔はそれをこすり合わせて火をおこしたため「火の木」という意味からきています。
樹形はイラストのように、杉よりも全体的に丸みを帯びたずんぐりしたスタイル。杉のように勢いよく成長せず、ゆっくり大きくなります。その分、杉よりも細胞が密で、重い木材です。
葉は、イラストのように鱗片状で、全体としては扁平で柔らかいのが特徴。
杉とは逆に乾燥地を好み、植林では尾根に植えられてきました。また、幼い桧の苗は日当たりを嫌うため、植林の際に葉の表を日当たりの良い方へ向けて植えてしまうと、日の光を避けようとねじれて育つため注意が必要な樹種でもあります。木は全て太陽が好きか・・・と言えば、そうでもないようですね。
桧は杉と同様に日本固有の木で、北は福島県、南は九州までと広範囲に分布しています。戦後の植林の主要樹種であり、杉の次に多く植えられたのが桧です。良質の「木曽桧」は、「秋田杉」や「青森ヒバ」と並んで「日本三大美林」と言われ、世界的にも有名。また、台湾には「タイワンヒノキ」という桧の変種が分布し、日本で最高齢の桧は450年生と言われていますが、何と台湾には2000年生のタイワンヒノキがあるとか。
性質としては、加工しやすく素直である点は杉と同じですが、細胞がやや密なため、比重は杉よりも少し大きく、重く堅いのが特徴です。材の中心部分(心材)と周りの部分(辺材)部分の色の差があまりなく、また含水率が低いので乾燥も容易。粘りがあって、水や腐れ、シロアリにも強いため、住宅の土台としても最適です。多くの人が好むあの独特の香りにはリラックス効果があり、その成分には高い抗菌作用があると言われています。
桧は世界で最も優れた針葉樹(建築用材として)として認識されており、最高品質の建材として古くから建築に活用されてきました。特に神社・仏閣・寺院などの建築には必須とされ、飛鳥時代の桧造りの建築には優れたものが多く、法隆寺は世界最古の木造建築物として今もなお立派に存在しています。このことは何よりも、桧の建築用材としての素晴らしさを証明しています。
また一方で、キメの細かさや色の白さが好まれ、仏像や能面の彫刻材や家具にも広く活用されてきたのも桧です。現在では一般建築にも使われ、特に和の様式をもった建築物には多く活用されています。
世界が認めた優れた建築用材・桧は、まだまだ身近にたくさんあります。土台に柱に和室まわりに・・・と、有効に活用していきたい樹種です。



